同僚警官の速度超過を見逃していたとして、長野県警の警官3名が書類送検されました。
通常ならば警察の不祥事に当たる事件と思われるかもしれませんが、私の見解は異なります。
これらの警官は何故書類送検されたのでしょうか?
毎日の記事
警察の不祥事って何故か毎日が報道するケースが多いですよね。産経や読売はまずやりません。それはさておき記事ですが…
http://archive.is/wqlVW(魚拓ですが全文は読めません)
毎日新聞2016年10月21日 10時01分(最終更新 10月21日 10時22分)
警察官による速度違反を見つけながら違反切符を切らずに見逃したとして、長野県警監察課は20日、上田署交通課で勤務していた47歳と58歳の男性警部補2人を、犯人隠避などの容疑で長野地検に書類送検した。2人は別の日時に見逃したとされており、県警は「同種の事案が重なったのは偶然で、組織的な計画性や常態化はない」と釈明している。
容疑は、上田市内で交通違反の取り締まり中、警察官の速度超過を見つけたのに、違反切符を切らなかった、などとしている。47歳の警部補は2014年7月〜15年7月に4件4人、58歳の警部補は15年7月に1件1人の違反見逃しに関わったとされる。2人は容疑を認め、停職6カ月の懲戒処分を受けて20日に依願退職した。
また、15年7月、違反を見逃した47歳の男性警部補から「切符を切らなかった」と電話で連絡を受けながら、見逃しを容認したとして、県警本部交通部の男性警部補(49)を犯人隠避容疑で長野地検に書類送検した。容疑を認めているという。
県警によると、速度違反していた警察官計5人は、事案発覚後に違反切符の告知を受け、反則金を納付したという。堀内明彦首席監察官は「県民の皆様に深くおわびする。業務管理を徹底し、再発防止に努める」とコメントしている。
なぜこれが犯人隠避容疑になるのでしょうか?私にはさっぱりわかりません。
犯人隠避とは?
刑法103条に規定があります。
(犯人蔵匿等)
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
速度超過は確かに罰金刑の対象ですから、犯人隠避が成立しそうな気もしますが、「隠避」って何でしょうか?
隠避とは、蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れさせるべき一切の行為を含む(大判昭和5年9月18日刑集9巻668頁) by Wiki
速度超過の事実を「発見」したのは警察官、つまり官憲ですよね?
で、止めては見たけどナカーマだったから警告指導処分にしたのですよね?
交通違反は犯罪捜査規範219条によって、余程の事情がない限りは逮捕しないようにすると定められています。
送検された警察官たちは、自ら犯罪を発見した上で、彼らの裁量権の範囲内で警告指導処分にしたのですから、「発見・逮捕を免れさせるべき一切の行為」をしていません。
警察官には見た違反全てを検挙する義務はない
当たり前の話ですが、警察官には、違反を見たからと言って全ての違反を検挙する義務はありません。
交通違反の取締りに関して言うなら、警察官には以下の選択肢があります。
- 見て見ぬふりをする(一番多い)
- 警告指導処分とする
- 誓約書を取る
- 切符処理(告知)する
道交法126上には「違反者があると認めるときは…(中略)…告知するものとする」なんて書かれてもいますが、これは手続きの一つを定めたものであって、警察官の義務ではありませんし罰則もありません。
違反者を発見したのに検挙しないのが犯人隠避になるなら、警ら中のパトカーに同乗している助手席の警察官は、日常的に犯人隠避をしていることになります。何故なら、道路交通法とはそもそも遵守することが不可能な法令だからです。
また、駐車禁止区域に駐車している車の横を通り過ぎているチャリの警官もアウトでしょうか?そんなことはありません。警察官には検挙する権利はあっても義務はそこまではないのです。
送検された警察官たちが、警察官職務執行法違反や地方公務員法違反でで指導を受けたとかいう話ならわかるのですが、犯人隠避はおかしいと思うのです。
送検した目的は?
そもそも、何故これらの警察官は身内の違反を見逃した事が発覚し、構成要件を満たすとも思えない犯人隠避で送検されたのでしょうか?
憶測でしかありませんが、送検された警察官は全員不起訴処分になるでしょう。それも嫌疑なしまたは嫌疑不十分で。そんな事は処分を決めた上層部も当然わかっているはずです。これで起訴されて有罪になることはないと。
だとすれば、この処分・送検の目的は以下の2つのどちらか、もしくはその両方でしょう。
- 警察官ですら見逃しがバレるのだから、庶民が見逃してもらえるはずがないと思わせるため
- 末端警察官達に「身内だろうが検挙して反則金を集めろ」という脅しをかけるため
キャリア組とノンキャリ末端交通課職員では身分が違います。警察上層部は末端の警察官達を同じ人間だとも思っていないでしょう。だから都合に応じて簡単に切り捨てます。
上層部が欲しい物は、突き詰めてしまえばカネと天下り先だけです。今のニホンは専制国家と同じですから、支配原則は「恐怖」です。
とはいえ、警察官も人の子、相手が同僚だったりちょっと階級が上の警察官だったりしたら、検挙しようと思って止めても、「お疲れ様です!マルキュー(警察官を表す隠語)です!」とか言われたら、「気を付けて運転して下さい!」くらいのことしか言えません。
でも、警察上層部から見れば、現場で検挙されかかっている警官達も下々の者でしかありませんから、内部の人間からの密告などによって見逃している実態が明るみになれば、今回のような処分を下して法に対して厳格であるかのような演技をすることに厭いはないでしょう。
まあ、一言で言えば今回のは監察課が業務実績を示す為に末端の一部を生け贄にしたってことでしょうかね。