[ただの値上げ]首都高の料金、時間帯で変動させ交通量を調整へ

C2や外環の延伸で少しは渋滞がマシになった首都高ですが、建設から30年で無料にするという約束はどこへやら、利権屋とその取り巻き以外は誰も望んでいない東京オリンピックに便乗して恒久的な値上げを目論んでいるようです。

読売の記事

首都高の料金、時間帯で変動させ交通量を調整へ

http://archive.is/e4IYZ(魚拓)

 2020年東京五輪・パラリンピック中の渋滞緩和のため、開催都市の東京都や国、大会組織委員会は、首都高速道路の通行料金を時間帯によって上下させて交通量を調整する「ロードプライシング」を導入する方針を固めた。沿線自治体との調整を経て、今夏には具体的な料金案を決める見通し。大会期間中の渋滞緩和策の切り札としてだけでなく、大会のレガシー(遺産)として、大会後も首都圏道路網の混雑解消に活用したい考えだ。

組織委の調査によると、大会関係者の輸送に使う首都高の渋滞は大会期間中、平常時の2倍程度になると見込まれ、大会運営や経済活動に支障が出る恐れがある。組織委や都は、一般道も含めた「都心部の交通量15%減」を目標に、経済団体や物流業界などに協力を呼びかけているが、その効果は不透明だ。

そこで組織委や都は、海外で効果が実証されているロードプライシングに着目。首都高の平日の交通量は現在、1日約109万台で、通行料金は最大1300円(ETC普通車)だが、関係者によると、首都高運営会社の試算では、普通車などの通行料金を午前6時~午後10時は500円上乗せし、それ以外の時間は半額とした場合、交通量が1日最大5万台(5%)減少するという結果が出たという。

国土交通省と都、組織委などはすでに、担当者による会合を開いて具体的な料金案や効果について検討を始めた。大会関係者の輸送が多い時間帯は現行料金の2倍程度とし、輸送が少ない時間帯をその分値下げする案が出ている。

首都高の料金変更には都や神奈川、千葉、埼玉など沿線自治体の議会の同意も必要になることから、近く各自治体や物流業界などとの調整を行い、19年末頃までに同意を得た上で、周知期間を経て20年7月に開幕する大会時の導入を目指す方針だ。

ツッコミどころが多すぎて開いた口が塞がりませんが、誰でもわかるウソと問題点を挙げていきましょう。

ウソ1:試算の根拠がない

大会期間中の首都高の渋滞が2倍になるとの調査結果が出ていて、これを500円値上げすると交通量が5%減少するそうです。その根拠は?

オリンピック開催中に「何の為の車両が増えるのか?」を考えてみたら、実はそこまで増える事は考えられません。役員・スタッフ・選手の移動のための車両や観光バスが増えるでしょうから渋滞は確実に増えるでしょうが、普通に考えたら渋滞が増えるのは一般道の方です。

首都高の1日の交通量は109万台だそうです。交通量がどれだけ増えると渋滞が2倍になるというのでしょうか?

渋滞と交通量(交通容量とも言うそうです)の関係を調べてみようと「渋滞のメカニズム および渋滞対策の全体像」という首都大が作成した資料を読みましたが、渋滞の発生原因はボトルネック(車線減少・上り坂の起点・トンネル出入口)の存在というのはわかりましたが、交通量との単純な関係は導けないようです。

首都高を走ったことがある方ならわかることですが、首都高の渋滞原因は以下の3つです。

  1. 分岐と合流が多くそこがボトルネック(主にC1との合流)になる
  2. 急なカーブがある場所がボトルネックになる(箱崎の先の両国のカーブが一例)
  3. 首都高に乗る資格がないような運転が下手なドライバーが無駄な減速をする(それがボトルネック)

何をどう計算したら「渋滞が2倍になる!」と言えるのか私にはわかりませんが、交通量に関しては109万台が218万台になるとはとても思えません。

ちょっと想像してみて下さい。海外からの観光客が渋滞都市の東京でわざわざレンタカーで移動しないでしょう?東京ほど電車やバスの交通網が充実している都市はないのですから、当然観光客は電車やバスで移動します。電車はアホみたいに混むでしょうが、通勤時並みの過密ダイヤにして鉄道会社は輸送しようとするでしょう。

スタッフや選手を運ぶ車が毎日何十万台も必要だと思いますか?多くはバスやマイクロバスでの移動になるでしょうから、どう見ても毎日の輸送に使われる車両は1万台にも届かないと思います。

オリンピックの参加人数は選手だけだと11,000人くらいです。これに帯同する監督・コーチ・スタッフが10倍来ても(そんなに来ないと思いますが、せいぜい10万人というところでしょう。組織委員会がタダ働きで募集しているボランティアは「みんな電車か徒歩で来い」ですから交通量には影響しませんしね。

10万人が毎日移動する訳ではありませんし、バスに20人ずつしか乗せなくても5000台、大型バスなら40人は乗れますから2500台で済みます。出発地点は選手村なのですから、大会会場別にバスを用意してまとめて乗ってもらえばもっと少なくて済むでしょう。毎日全種目が開催されるわけではないのですから…

仮に5000台増えて全てが首都高を利用しても渋滞は2倍にはなりません。109万台の前では誤差の範囲です。

渋滞を減らしたいなら期間中だけ外環や圏央道の料金を半額とか無料にしてそちらに流れを誘導すれば良いだけですし、都心に用事がある車は値上げしたところで減らせません。

2倍になるという試算にも、値上げで交通量が減るという試算にも根拠はありません。そして、試算が外れても誰も責任を取らないのが官僚国家二ホンの日常です。

ウソ2:一般道の渋滞がヤバくなる

ただでさえ割高な首都高をさらに値上げしたら、そりゃ交通量は減るでしょう。では、首都高に乗らなかった車はどこを走るのでしょうか?

当たり前の話ですが一般道を走ります。一般道の渋滞は苛烈を極めるでしょう。

前項で述べた選手移動用や観光バスの増加は、確実に一般道の渋滞を悪化させます。大型バスは走ってるだけでも遅くて渋滞の原因になりますが、乗り降りの為に停車されると1車線潰してしまうので渋滞原因のボトルネックを至る所に作ってしまいます。

平日の昼間に秋葉原付近を通過しようとすると、信じられないくらい渋滞している事がありますが、先頭までたどり着くと中国人観光客を運ぶ観光バスが路駐している事が原因、なんてことはよくあります。何しろ、観光客の買い物が終わるまで路駐をしているのですから、どこもかしこも1車線道路になってしまっている訳です。

これがオリンピックではもっと大規模に起こります。選手を乗せたバスは競技場内まで入れるかもしれませんが、観光バスは路駐する以外に選択肢がありませんからね。

そこに首都高の値上げによって一般道に降ろされた車が加わるのです。もはや、阿鼻叫喚の混雑しか想像出来ません。

値上げによって首都高の渋滞が緩和出来ても、降りてからの一般道がフリーズしていたら意味がありません。場所によっては出口渋滞が高速上にまで繋がってトンデモないことになるでしょう。高井戸出口とかよくそうなってますね。

解決策はインフラ整備で、出口付近の車線増加や信号システムの見直しなのですが、そういう役に立つことはやらずに、一部の利権屋が儲ける為だけに値上げをして、蓋を開けてみたら渋滞は減るどころかトータルでは増えていた。そんなことになる悪寒しかしません。

ウソ3:東京オリンピックの為の施策ではない

最初に「オリンピック時には渋滞がヤバくなるから、値上げして渋滞を緩和する」と言っておいて、舌の根も乾かぬうちに「オリンピックが終わっても大会のレガシー(遺産)として値上げは継続する」なんて言ってますね。もうアホかと…

要するにさらに値上げして利権屋がボロ儲けしたいだけで、結果として起こる一般道の更なる渋滞や値上げによる運送コスト増加による景気への悪影響についてはダンマリです。

アベノミクスそのものがデフレ対策ではなくスタグフレーション政策(賃金は上がらないが物価だけが上がる悪性インフレ)ですが、この首都高の値上げもその一環と言えます。

本当に渋滞を緩和したいなら、環状線の3車線化や圏央道の無料化などをすればよいと思いますが、圏央道にしても片側1車線区間が多くてすぐに渋滞が発生しており、期待したほどの成果は出ていないように見えます。

受益者負担とかいう意味不明のロジックで高速道路の建築費や維持費を通行料金で償却しようとするからこんなことになっている訳で、一般道と同じく公共インフラとして高速道路の建設し、都市部のみ渋滞緩和の為に有料化すれば良かったのです。それを諸外国ではロードプライシングと呼んでいます。

ところが、日本では高速を走るだけでカネが取られるので物流コストが無駄に上がり、コスト増を嫌う中小業者や個人事業主は高速を使わずに一般道を長時間運転して輸送するので、これがトラックドライバーの長時間労働の要因にもなっています。

渋滞が予想されるなら、車線を増やすか、ボトルネックになっている場所に対策をするか、別ルートを作って交通集中を分散させるなどの施策を採れば良いだけですが、利権天国中世ジャップランドと名高い我が国では、一部の者のカネ儲けのためだけに「首都高を値上げして一般道の渋滞を苛烈化させて都内の交通を麻痺させる」という自爆戦術を採るようです。

東京オリンピックは中止すべきですね。既に法外な建設コストや役員報酬でボロ儲けしたのでしょうから、JOCの竹田の逮捕に合わせて東京オリンピックなんぞ中止にしてしまえばよいのです。

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コメント

  1. アラフィフ より:

    最近、都内で宿泊し、初めて「宿泊税」があることを知りました。
    東京都が初めて導入し、大阪府と京都府にもあり、
    他の自治体でも導入が検討されていることや、
    オリンピック・パラリンピック期間の前後3ヶ月間は免除、
    ということも、ちょっと調べて分かりました。

    横浜市には「みどり税」があります。
    この記事を見て、久しぶりに検索してみたら、
    平成31~35年度も継続とのこと。

    何かと名目を付けて、権力者は庶民から搾取しますね。
    不当な検挙をされなければ、鈍感なままだったと思います。

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