このコラムで引用する格言については、一般的にはドイツ陸軍の参謀総長(最終的には上級大将)だったハンス・フォン・ゼークトのものだと言われていますが、実際にはクルト・フォン・ハンマーシュタインが元ネタのようです。
でも、そんな事はどうでもいいのです。
大切なのは、名言や格言と呼ばれるものを読んだ時に、我々が何を感じ、どう考えるかなのですから。
ゼークト版の4分類
これは有名なのでご存知の方も多いでしょう。
軍人は4つに分類される。
有能な怠け者。これは前線指揮官に向いている。
理由は主に二通りあり、一つは怠け者であるために部下の力を
遺憾なく発揮させるため。そして、どうすれば自分が、
さらには部隊が楽に勝利できるかを考えるためである。
有能な働き者。これは参謀に向いている。
理由は、勤勉であるために自ら考え、また実行しようとするので、
部下を率いるよりは参謀として司令官を補佐する方がよいからである。
また、あらゆる下準備を施すためでもある。
無能な怠け者。これは総司令官または連絡将校に向いている、もしくは下級兵士。
理由は自ら考え動こうとしないので
参謀の進言や上官の命令どおりに動くためである。
無能な働き者。これは処刑するしかない。
理由は働き者ではあるが、
無能であるために間違いに気づかず進んで実行していこうとし、
さらなる間違いを引き起こすため。
わかりやすい分類と言えますね。組織に属する人間を4つに分類すると以下のようになるというお話です。
- 有能な怠け者:組織のトップや管理職向き
- 有能な働き者:組織のブレイン(参謀)向き
- 無能な怠け者:平社員向き
- 無能な働き者:リストラすべき
皆さんが属している組織ではどうでしょうか?私の会社は経営陣に3と4しかいないのでどうしようもありません。
中間管理職はほぼ全員が4で占められています。
無能なトップにとっては、自分よりも有能な人間を出世させてしまうと不安でならないんでしょうね(笑)
有能と無能の定義は?
このゼークトの名言?には必ずと言っていいほど「有能と無能の定義は?」とか「誰が有能か無能かを判断するんだ?」というようなツッコミが入ります。
そういうツッコミをしてしまう時点で私は無能だと考えてしまうのですが、そんなものは自分で考えて判断すればいいでしょう?
世の中に絶対的な善とか正解とかはないのですから、有能と無能の定義も人それぞれ違ってよいのです。
ちなみに私にとっての有能と無能の定義は以下の通りです。
- 有能な者:自分の過ちや能力不足を素直に認めて、改善の為の努力が出来る者
- 無能な者:自分の過ちや能力不足を絶対に認めず、「俺(私)は何も悪くないのに!」とか思ってしまう者
要するに「自分は有能だ」と思ってる奴ほどヤバイという事です(笑)
人には向き不向きがありますから、自分でやるよりも他人に任せた方が良いと思われる事は丸投げしてしまうのもアリだと思います。
その代わりに丸投げした事が失敗した時には投げた方が責任を取る。
有能な者は「任せる相手を間違えた自分の見識不足」と考えますからちゃんと責任を取るでしょう。
無能な者は「失敗したのは任せた相手の責任だ。俺(私)は何も悪くない!」と考えますから責任を取るどころか任せた相手の責任を追及し始めたりします。
無能な者にはなりたくないものですが、気を付けていないとついつい他罰的になってしまいますね。
ハンマーシュタインの定義
ゼークトの名言?の元ネタだと言われているハンマーシュタインによる定義は以下の通りです。
将校には四つのタイプがある。利口、愚鈍、勤勉、怠慢である。多くの将校はそのうち二つを併せ持つ。一つは利口で勤勉なタイプで、これは参謀将校にするべきだ。次は愚鈍で怠慢なタイプで、これは軍人の9割にあてはまり、ルーチンワークに向いている。利口で怠慢なタイプは高級指揮官に向いている。なぜなら確信と決断の際の図太さを持ち合わせているからだ。もっとも避けるべきは愚かで勤勉なタイプで、このような者にはいかなる責任ある立場も与えてはならない。
利口と愚鈍、勤勉と怠慢は両立しませんから、やはり分類としては4つですね。
- 利口で怠慢→有能な怠け者
- 利口で勤勉→有能な働き者
- 愚鈍で怠慢→無能な怠け者
- 愚鈍で勤勉→無能な働き者
これでゼークト発言?に繋がりますね。ゼークトはハンマーシュタインの言葉を知っていたからそれを当時のドイツ陸軍に適用したという事かもしれませんね。
ここでも「利口と愚鈍の定義は?」という話が出るのでしょうが、有能と無能の定義と同じで良いでしょう。
自分の能力不足を認識して謙虚になれるかどうかが分かれ目であるというのが私の解釈です。
無能な働き者にはなるな
原典がどちらであれ、言いたい事は一緒です。「無能な働き者ほどタチの悪いものはない」という事ですね。
無能な者ほど、「行動も起こさない奴が文句だけ言うな」とか「反対するなら対案を示せ」とか言い出すのですが、
- やらない方がいい事をやろうとしている奴がいたら「やめろ!」と言うのが当然でしょう?
- 前提が間違っている議論をしている奴らがいたら「前提がおかしいだろ?」と指摘するのが当然でしょう?
- その課題に対して責任があり、かつ報酬を得たりしている立場の人間には、批判を甘んじて受ける義務もあるでしょう?
私はこんな風に思うのです。
例えば消費税再増税時に軽減税率について世論操作が繰り返されていますが…
- 景気を良くしたいなら消費者層に対する減税でしょ?
- 増税して景気が良くなった国は過去に一例もないでしょ?
- 消費税を廃止すれば一気に消費が増えるでしょ?
- 財源が不足する?日銀を国有化すれば解決でしょ?
1989年度から91年度ころの国税構造はこうだった。
所得税 27兆円 法人税 19兆円 消費税 3兆円
これが2015年度は
所得税 16兆円 法人税 11兆円 消費税 17兆円 になっている。
政府が何をしているのかは、これで一目瞭然なのだ。
— AfterMath (@celavierm) 2015, 9月 26
間接税は逆進性が高いですから庶民が苦しくなります。
直接税は累進性が高いですから富裕層の利得が減ります。
ニホンでは金融資産1億円以上の富裕層は2%くらいしかいません。金融資産5000万円以上の準富裕層を入れても全体の8%くらいです。
消費税の導入及び増税、それに伴う所得税や法人税の減税は、この2%~8%が得る利得を増やし、残りの92~98%の生活を苦しくしました。トリクルダウン?そんなものが起こらない事は既に明らかになってしまっていますよね。
こんな風に悪くなった直接の原因は、金融資本詐欺の片棒を担いでいる財務省中心の官僚集団と、官僚に操られているだけの政治家達です。それを指摘して何が悪いと言うのでしょうか?
「その政治家達を選んだのは民意なんだから国民の責任だ!」ですか?だから何度も言っていますが、不正選挙なんですから民意なんて反映されていないでしょ?
話が逸れましたね(笑)
我々が富裕層に入れないのが、我々の無能さ故なのか有能なのに報われないだけなのかはわかりませんが(おそらく富裕層の大部分は「家系」が主因です)自営業や個人事業主を除けば、現代のニホンにおいては「働き者」であるメリットはまるでありません。
- 有能な働き者ならばブレイン向きですが、その適性を判断出来る人が人事権を持っていますか?
- 無能な働き者は組織を潰すだけですが、自分が無能ではない自信がありますか?
私は職場において自分が有能だとはとても思えません。
無能ならば怠け者でいる方が遥かにマシです。
もうアラフォーなのに、歳を取れば取るほど「さとり世代」の心情がわかるような気がします(笑)
なんだかまとまらなくなってしまったのでここで終わります。
好きな事は頑張ればいいと思いますが、経営者や株主を喜ばせる為に、身体を削って働く必要はないと思うのですがいかがでしょうか?
もちろん、あなたの属する組織では、有能な怠け者が経営者や管理職をやっていて、有能な働き者がブレインとなって効率よく働けて、無能な怠け者であっても言われた事だけやっていれば定時に帰れて給料もそれなりだと言うなら構いません。
しかし、私が見てきた世界では無能な働き者ほど出世しますし、不労所得で稼ぎまくっている富裕層の面々というのは「上手くやった奴」であって「頑張った人間」ではないと思うんですよね。
何が言いたいかと言いますと、自分の趣味で仕事を頑張るのは構いませんが、それを他人にまで押し付けないでいただきたい!という事です(笑)