常識とは18歳までにかき集めた偏見の寄せ集めを言う
アルバート・アインシュタイン
昭和生まれの私は、幼少の頃は近所に大きな公園があったこともあり、木登りをしたり友達と秘密基地を作って遊んだ世代です。
登れそうな木や壁を見つけたらとりあえず登ってみるとか、学校帰りに近所の塀の上を歩いて地面に降りずにどこまで行けるかを競い合ったりもしました。
当然落ちたり転んだりすることも多く、手足に擦り傷の絶えない生活を送っていました。昭和という時代は東京23区内であっても、割と活発に外で遊べる時代だったのです。
怪我をすると、親や学校の保健室の先生が、ヨードチンキやオキシドールで消毒をして、傷の大きさによっては軟膏を塗ったガーゼを当ててからテープで留めてくれました。
消毒が物凄く痛かったですが、バイ菌をやっつける為だと思って我慢していました。
しかし、この治療法は完全に誤りで、むしろ治りを遅くして化膿する原因ともなりうるものだったのです。
以下の本を読んだのは4~5年前ですが、そう言えばサイトで紹介していなかったと思い、改めて読み直してみましたが、やはり良い本です。ちゃんと論理的・科学的で「どうして傷口を消毒してはいけないのか?」「どうして傷口を乾燥させない方が治りが早くて痛みも少ないのか?」という点について解説してくれています。
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
新書版 907円
Kindle版 616円(Unlimited契約者は無料)
この本は本当にオススメですので是非買って読んでいただきたいのですが、筆者のまえがきから一部だけ引用して御紹介しておきます。
そういえば、江戸時代の男たちは皆、丁髷姿で歩いていた。なぜ丁髷をしているの、と江戸時代人に質問しても、おそらく「皆がしているから」という答えしか返ってこなかったはずだ。男なら丁髷だ、と当時の日本人は考えていたと思うが、明治維新後、丁髷廃止令が発布されたわけでもないのに丁髷は速やかに衰退した。「皆が丁髷をしているから丁髷を結っている」以外の理由がなかったからだろう。要するに、日本以外の国を知らなければ丁髷を結っていない人間を見る機会はなく、その結果、丁髷を結わないという選択肢がなかったのだ。
「皆がしているからしている」という丁髷的治療は、医学界にもある。傷を消毒する、傷にガーゼを当てて乾かすという治療法である。筆者はおよそ一〇年前、この「傷は消毒してガーゼを当てる」という治療が、科学的根拠のない単なる風習に過ぎないことに気がついた。医学の基礎研究の分野では、一九六〇年頃から「傷が治るとはどういう現象なのか」についての研究が始まり、傷が治るメカニズムが解明されてきたのに、なぜかその知識は研究者の間でしか知られておらず、実際に傷の治療が行われている医療現場には全く伝えられていなかったのだ。偶然にも私は、そういう分野に足を踏み入れてしまったのだ。
そのような中で私は一人、傷が治るメカニズムに沿った治療を始めてみた。とはいうものの、どういう治療材料を使ったらいいのか、それらをどう組み合わせればいいのか、わからないことだらけである。教科書もなければ教えを乞う先人もいない。船出はしてみたものの海図もなければ羅針盤もないようなものだった。どちらに向かったら陸地にたどり着けるのかもわからないし、そもそも陸地があるかどうかもわからない状態だった。
しかし、そういう手探りの航海を続け、傷の状態を毎日観察するうちに、色々なことがわかってくる。こっちに行ったら危なそうだとか、これは危険信号だとか、こっちに進めば目的地に着けそうだとか、そういうのが次第に見えてくる。
その結果、海図らしきものができてきた。それが、筆者が提唱している「傷の湿潤治療」である。「傷を消毒しない、傷を乾かさない」という二つの原則を守るだけで、驚くほど早く、しかも痛くなく傷が治ってしまうのである。治療を受けた患者さんも驚くが、一番驚いているのは治療をしている当の医師、という治療である。従来から行われている傷の治療に比べるとケタ違いの治療効果があることは明らかなので、それを他の医師にも教えたくなり、インターネットや講演活動を通して治療の宣伝をするようになった。患者さんにとっては「痛くなく早く治る」のはこの上ない福音だし、ケガを早く治すのが医師の仕事なのだから、すぐ治療が普及するだろうと簡単に考えていたのだ。
この本の作者である夏井睦(まこと)という医師の方が提唱した湿潤療法は、今では一定の市民権を得て湿潤療法の為のハイドロコロイド包帯やプラスモイストなども市販されています。
しかし、幼少期から繰り返し擦り込まれた洗脳は深いですから、今でもついマキロンなどで消毒をしておいた方が良いと考えてしまっている方も多いのではないでしょうか?
湿潤療法をする為の3種の神器
詳しくは書籍を読んでいただきたいですが、通読すれば結論として「もう傷を消毒したり乾かしたりするのはやめて、擦り傷や軽度の火傷は湿潤療法で直そう」と思うでしょう。
湿潤療法のやり方は簡単で、本を読めば誰でも自宅で出来ます。重傷の場合は病院に行くしかありませんが、軽度の怪我なら以下の方法で問題ありません。
- 傷口を流水または生理食塩水でよく流す
- 白色ワセリンを傷口またはプラスモイストやラップに薄く塗る
- 傷口をそれらで覆って乾燥を防ぐ
- 1日1~数回1.からやり直して貼り直す
ただ、これだけです。これですぐに痛みも引いて治りも早く、治った際の傷口も綺麗になります。
この本を読んだ数年前以来、我が家には常に白色ワセリン・ハイドロコロイド包帯・プラスモイストが常備され、子どもの怪我はそれらの組み合わせで対応していますが、何しろ湿潤療法は痛くないので子ども達にも好評です(笑)
傷口を流水もしくは生理食塩水で洗うのは、汚れを落とし、化膿の原因となる細菌も「ある程度」流す為です。生理食塩水の方が染みませんので、うちでは塩目薬としても使用する為にたまに作って使っています。
生理食塩水の作り方は簡単で、0.9%の食塩水ですから、
水100g + 岩塩or海塩1g を混ぜるだけ
です。塩水ですので常温で2週間程度は使えますので、花粉症の方は防腐剤フリーの目薬としても御使用いただけます。
さて、残りの3種の神器は近所の薬局もしくはネットで入手します。
390円(あわせ買いの場合)
スキンケアにも使いたい方はもっと大容量の物もありますが、お試しとしては60gのこれくらいで良いかと。傷だけでなくササクレや虫刺されにも使えますし、人畜無害なので誤って目に入っても大丈夫です。つまり、目の傍の怪我でも使える万能品です。
718円(2018/3/5現在)
包帯と銘打っていますが、そのまま傷口の被膜シートとして使えます。好きなサイズに切って使えるので、キズパワーパッドよりも遥かにお得です。
3,200円(2018/3/5)
傷や火傷の範囲が大きくて、ハイドロコロイド包帯では覆えない時や、ジュクジュクが大量に出そうな時はこちらを使います。
価格が高めなので、ここも節約したい方は、食品用ラップに白色ワセリンを塗った物で代用しても良いですが、ラップの場合は交換頻度が高めになりますので、コストと手間を比較して決めると良いでしょう。
うちではプラスモイストはもったいなくて滅多に使わないので、結局白色ワセリンとハイドロコロイド包帯ばかりを買い直しています(笑)
湿潤療法のメリットは本当に絶大です。
- 痛くない
- 治りが早い
- 治った傷も綺麗
コメント
私の小学校の頃は、ケガをすれば消毒して赤チンがお決まりでしたが、
実家は「放っておけば治る」でしたから、水道で洗ってそのまま・・・
広範囲の擦り傷だと、衣類が貼り付いて困ることもありました。
途中までは正しい処置だったということですね。
身内が階段から落ちて頭を縫った時に、
傷口を乾かさないようにするパッドを、1、2週間?貼り続けていたと聞き、
1ヶ月後位に会ったら、傷口が全然分からなかったので驚きました!!
で、子供が火傷した時に、『プラスモイスト』を買いました。
ドラッグストアでは売っていなくて、他のパッドでしのぎ、
1枚でやめてしまったので、こちらは効果がよく分からず。
ワセリンは石油から作られているので、注意した方がいいです。
私も子供も塗ると痒くなるのでNGです。