交通取り締まりの警察対応「はなはだ不誠実」 大阪高裁が裁判打ち切る

取締現場でパトカーのドラレコ映像を見せなかったことは「はなはだ不誠実」だとして、信号無視容疑で起訴された男性の裁判を大阪高裁が打ち切りましたが、この事件から我々が学べることとはなんでしょう?

産経新聞の記事

交通取り締まりの警察対応「はなはだ不誠実」 大阪高裁が裁判打ち切る

http://archive.is/UrGhC(魚拓)

産経新聞 12/6(火) 20:23配信

信号無視でパトカーに摘発されたのに、反則切符の受け取りを拒んだとして、道交法違反罪に問われた不動産業の男性(60)=大阪府枚方市=の控訴審判決公判が6日、大阪高裁で開かれた。福崎伸一郎裁判長は「男性が切符を受け取らなかったのは警察官の不誠実な対応が一因。そのことを棚に上げ、刑事処分としたのは男性に対して酷であり、信義に反し無効だ」として、罰金9千円とした1審枚方簡裁の略式命令を破棄、裁判を打ち切る公訴棄却を言い渡した。

控訴審判決によると、男性は昨年7月、大阪府枚方市内で車を運転中、赤信号を無視したとして、大阪府警のパトカーに停止を求められた。男性は「黄色信号だった」と主張。パトカーの車載カメラ映像を確認したいと要求したが、受け入れられず、反則切符の受け取りを拒否したため逮捕、起訴されていた。

判決理由で福崎裁判長は、検察官からカメラ映像を見せられた男性が一転、赤信号だったと認識を改め反則切符の受領を希望した点を重視。当初から映像を示していれば反則金の納付で済んだのに、警察官が「そんなものはない」と拒んでいたとして「その対応ははなはだ不誠実というほかない」と批判した。

大阪高検の北川健太郎次席検事の話「判決内容を精査し適切に対応する」

切符受領拒否は逮捕事由にはなりません

別名「産廃新聞」とも呼ばれる産経新聞の記事ですから鵜呑みにするのは危険ですが、さらっと通用しない理屈が書いてありますね。

パトカーの車載カメラ映像を確認したいと要求したが、受け入れられず、反則切符の受け取りを拒否したため逮捕、起訴されていた。

反則切符の受け取りを拒否しても逮捕事由にはなりません。

犯罪捜査規範219条

交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。

「その他の特別の事情」というのは、過去の判例等から以下の項目にほぼ確定しています。

  • 居所氏名が不明である
  • 証拠隠滅の虞がある
  • 無免許運転の疑いがある(免許証提示を拒否)

反則切符の受領拒否はよくある話ですから、むしろ警察は被疑者が否認をしていると最初から切符を渡そうともせずに、捜査報告書には「被疑者が受領を拒否」と嘘を書きます。

警察は息を吐くように嘘をつく組織ですが、新聞社も嘘つきだらけですからね。

この事件にしても、建前上は他の理由(逃亡の虞があったなど)で逮捕したに違いありません。

それをあえて「受領を拒否したため逮捕」と虚報を流して、否認してはならないかのような印象操作を行うのが産廃新聞のお役目というワケですね。

ニホンには「嘘つき罪」はない

日本人は小さい頃から繰り返し「嘘をついてはなりません」「嘘つきは泥棒の始まりです」などという洗脳教育を受けていますから、良心的な?大多数の一般大衆は「嘘をつくのは良くないこと」と思い込んでいます。

では、太った人を見たら「太ってますね~」と言い、ブサイクな人を見たら「見た目が悪くて印象が悪いですよ~」と言うのかと言えばそうはしません。

そういう時は「嘘も方便」などと言って、似合ってもいない髪型をしている人にも「いい感じじゃないですか!?」などと平然と嘘をつくのです。

さて、こういう矛盾した論理を持っている人には受け入れづらい話なのかもしれませんが、ニホンには「嘘つき罪」という犯罪はありません。

公判時に宣誓した上で偽証を行って初めて偽証罪が成立する余地がありますが、ほとんど適用されることもありません。

あなたが信じようが信じまいが、ニホンでは「嘘はどれだけついてもOK」なのです。

嘘の話で金銭を騙し取るのは詐欺罪になるからダメですよ。金銭的な利得が無ければ嘘つき自体は取り締まれないというお話です。

判決理由で福崎裁判長は、検察官からカメラ映像を見せられた男性が一転、赤信号だったと認識を改め反則切符の受領を希望した点を重視。当初から映像を示していれば反則金の納付で済んだのに、警察官が「そんなものはない」と拒んでいたとして「その対応ははなはだ不誠実というほかない」と批判した。

本当はパトカーのドラレコ映像で被疑者が信号無視する様子が撮影されていたのです。

男性はそれを見せろと警察官に言ったにも関わらず、警察官は「そんなものはない」と明確な意思を持って嘘をついていますね。後で検察には映像データを提供しているのですから。

で、これだけ明白な嘘をついた警察官に対して裁判長は「不誠実だと批判した」だけです。

不誠実なだけで不法行為ではありません。この警察官は違法行為は何もしていないのです。

「誠実か不誠実か?」なんて問題は極めて主観的な問題です。

この裁判官は不誠実だと感じて控訴棄却の判断をしましたが、別の裁判官なら問題としなかったかもしれません。そもそも、法令には「誠実」と「不誠実」の定義は書かれていません。

だから私は、ニホンは法治国家ではなく人治国家だと主張しています。

誰が犯罪行為を行うかで有罪か無罪かが変わります。

白バイ隊員は赤色灯と点けずに暴走しても常に無罪です。「実は点けていた」とか「取締中だった」とか、挙句の果てには「速度超過自体していない」と主張するだけです。

誰がそれを判断するかでも有罪か無罪かが変わります。

努力目標という名の検挙ノルマが終わった後の警察官なら、一時停止を徐行で通過する場面を見てもスルーする事も多いでしょう。

そもそも、パトカーが巡回している時に、そこら中に違法駐車のクルマが停まっているのに、平然と横を通過して取締りもしませんよね?警察官には交通違反を現認しても検挙する義務はありませんから。

なのに、検挙されそうになって「厳重注意で良くない?」って言うと、「ダメだ!違反は全て切符処理しなければならないことになっている!」とか平然と嘘をつくのです。

控訴して頑張った男性は偉い

この事件では、簡裁で一旦略式命令が出ています。

略式起訴は被疑者が同意しない限りは起訴出来ませんから、この男性は検察で映像を見せられて納得し、自ら略式起訴を受け入れたワケです。

ここで男性が略式起訴を受け入れずに否認していたらどうなっていたでしょうか?

たかが信号無視の青切符ですから、おそらくは不起訴になっていてこのように報道される事もなかったでしょう。

検察は公判請求して正式裁判に持ち込む事も出来ますが、検事の日当等を考えれば罰金9千円では明らかに赤字ですし、検察が被疑者に見せたパトカーのドラレコ映像が公判に証拠提出される事はなかったでしょう。

何故なら、一度でもそういう判例を残してしまうと、次からは「証拠映像がないから証拠不十分だ!」と被告人側に主張されてしまうからです。

警察・検察の論理では「警察官の現認証言だけで立証は尽くされている」という建前なのですから、交通違反の検挙に映像証拠は必要ありません。

今回の事件にしても、検察は面倒がない略式に応じさせる為に見せただけであって、この控訴審でも映像証拠が提出されたかどうかは記事からはわかりません。

私としては、ちゃんと警察・検察が映像証拠に基づいて交通違反の取締りをするようになった方が、誤認を含めた冤罪の可能性が減って望ましいと思うのですが、効率的に集金したいだけの警察サイドから見れば、映像証拠の義務化はリスクでしかありません。

「いつでも、誰でも逮捕できる国作り」こそが、安倍晋三のような白痴が言うところの「ウツクシイクニ」なのですから、今後も映像証拠をベースにした検挙は行われないでしょう。

この男性は信号無視はしてしまいましたが、略式命令を不服として控訴した為に、今回のように警察官が現場で平然と嘘をついていることが白日の下に晒される判決へと繋がりました。

赤切符関連の否認事件や、切符を切られた後から撤回や反則点の抹消を望む人にはいつも言っていることですが、

諦めずに戦った人の一部だけが、赤切符での不起訴やレアな処分取消という権利の確保に繋がることがあるのです。

諦めなかったからと言って勝てるほど世の中は甘くありませんが、諦めてしまえばその時点で負けが確定します。

仕事やレジャーで大活躍の「自動車を運転する権利」である免許証を守る為には、納得がいかない事は納得がいかないと否認を貫ける人が一人でも増えて欲しいものです。

twitterはじめました

コメント

  1. YC より:

    この記事の詳細が出てますね。
    http://www.sankei.com/smp/west/news/170105/wst1701050002-s1.html

    違反切符の受領を拒否したら起訴みたいな書き方をしてて、なに言ってるんだとも思いましたが…

    最後にしれっと検察が上告したって書いてありますね。その前には警察としては都合が悪いようなことが書いてありますが、つまりそういうことなんでしょうかね。
    仮にこれで上告も棄却されたらいい判例になると思いますが、不思議と逆転有罪判決が出る予感しかしませんね。

    • 取締り110番 より:

      今の大手メディアは全て大本営発表を伝えるだけの宣伝機関ですから仕方ありませんね。まともなのは東京新聞の一部と日刊ゲンダイくらいなものです。文春もちょっと頑張ってますかねw

      カルト国家ですから、権力側が間違っていたという判決等は受け入れがたいでしょう。

      裁判員制度を導入した所で、高裁・最高裁で逆転有罪が可能なのですから何の意味もありません。

      裁判員制度導入に伴う予算確保が主目的と考えるのが一番妥当でしょうね。

  2. man in the mirror より:

    以前も投稿させていただいた者です。
    その節はありがとうございました。

    8月にY形県警に速度超過で切符を切られました。
    認めず、その場で調書も取ってもらいました。
    現場の警察官も「あとは検察の判断になります」
    と言っていたのに、年の瀬にご丁寧に納付書とピンク色の
    切符が配達証明で送られてきました。

    これは単なる行き違いでしょうか??

  3. アラフィフ より:

    http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p1095631.html

    神奈川県公安委員会定例会議12/14の議事録の報告に
    『ドライブレコーダー映像の適正保存と有効活用について
     警察本部から、「ドライブレコーダー映像の適正保存と有効活用」について
     報告があった。
     委員から、「警察が管理するドライブレコーダー画像については、組織として
     統一した基準で管理されるようにしてください。」旨の発言があった。』
    というのがあり、この裁判打ち切りの影響かな?と思いました。

    『有効活用』の内容が気になりませんか?!

  4. たいぞう より:

    書き忘れてしまいました。
    結局この男性の逮捕事由は何だったのでしょうかね・・・?
    免許証の不掲示・・・?ですかね。居所不明が事由・・・?
    たぶん「切符を受け取らなかったから~」って言うのは記者が馬鹿すぎてわかっていないからそう誤解しただけと思います。馬鹿な記者が本当に増えました。一応上司が校閲するはずですから、上司もひっくるめて馬鹿ばかりということになりますね。

    • MTK より:

      馬鹿と言うよりは一般的な認知度がその程度ということでしょう。私もたまたま赤切符を切られてブログ主さんに助けていただいてここを読破したので違いますけど、そうでなければ一生そっち側の人間だったと思います。

  5. たいぞう より:

    ちょっと驚きですね。
    もしかするとこの男性は「無理やり公判に持ち込んだ」のではないですか??
    おっしゃる通り、こんなものは不起訴が妥当です。
    公判をやりたいと思っても、不起訴にされてしまう・・・
    ところが無理やり公判をやる方法が今回の、略式裁判に応じて判決に不服を申し立てる、という方法ですよね?!?
    長年「裁判になるぞ・勝てないぞ・金もかかるぞ詐欺」で脅して反則金を奪ってきている警察ですが、本当はみんなで不服を申し立てられると困ったことになるのですよね。
    私が2014年に反則金を拒否するから調書を取れと言ったときはなんと3ヶ月も待たされました。忙しいからすぐには無理なんですって。出頭しないと逮捕するとか言っておきながら、行くというと「忙しい」って、なんて素晴らしい二枚舌でしょう。ああ、嘘つき罪は無いんでしたね 笑
    みんなで、反則金を蹴って通常手続きにするだけでもパンクですが、
    更にみんなで一旦略式を受けて判決を蹴られると、大爆発、ですね 笑
    この場合は偏向裁判で殆どが敗訴になるので犠牲が必要ですが、日本を正すにはいい方法かもしれませんね・・・。
    それにしてもこの判決は意外です。
    裁判官の仲間内でもちょっとした話題になっているのではないですかね。
    この裁判官は出世を諦めているのかな???

    • 取締り110番 より:

      生涯一度も無罪判決を書かずに引退する裁判官も多い国ですが、それだけに出世を諦めて本当の良心や心証に従って判決を書いてみたいと考える異端裁判官も稀には出るでしょう。

      ただし、今回は無罪判決ではなく裁判の中止ですから、「こんな杜撰な事件で公判開かせるようなヘマをするな」という検察へのメッセージかもしれませんね。

      裁判官のその後を数年単位で追わないと出世に響いたかどうかはわかりませんが、そこまでの興味はありません(笑)

  6. MTK より:

    日本三大悪徳警察の大阪府警ですか。不当逮捕も甚だしい。行政処分と違反金のためとは言え逮捕・拘留は賢い選択でないことはここの愛読者からすれば当然のことと思いますが、この裁判例は引き合いには使えそうですよね。
    検察官からビデオを見せられたのは控訴後ですよね。被告側からの控訴棄却もできただろうにそれをしなかったのはアホ府警に一泡ふかしたかったからかもしれませんね。
    一人でも多くのドライバーにここを読んでもらって正しい対処法を知ってほしいです。

返信をキャンセルする。