交通違反の取締りに客観性は要らないようです[兵庫県警]

捜査報告書を偽造、70人書類送検[兵庫県警]の記事を載せたところ、サイト常連で貴重な情報を数多くお寄せいただいているアラフィフさんから、兵庫県警の今後の対応についてのコメントをいただきました。警察の方針がわかる良い指摘だったので記事にしておきます。

捜査報告書の偽造が起きた理由

捜査報告書の偽造が横行したのは、兵庫県警では速度超過や信号無視で取り締まりを受けた人が否認している事案については、捜査の客観性を保つため第三者の警察官が実況見分し、見取り図を作るよう定められていたためです。

名義借り1

部分引用しながら偽造が起きた理由について検討してみましょう。

警察官ら70人書類送検 交通違反の見取り図「名義借り」 兵庫県警

交通違反の取り締まりで現場の見取り図などを作る際、兵庫県警の高速隊員や警察署員が県警内部のマニュアルに反する処理を重ねていたことが30日、捜査関係者への取材で分かった。速度超過や信号無視で取り締まりを受けた人が否認している事案については、捜査の客観性を保つため第三者の警察官が実況見分し、見取り図を作るよう定められているが、取り締まりの際と同じ警察官が作った上で、同僚に署名・押印を頼む「名義借り」などを行っていた。

前述の通り、兵庫県警にこのような内規があった理由は「捜査の客観性を保つため」です。

で、実際にはどうしていたのかと言うと、

 違反があったのは2009年夏~14年春で、計65件。大半が見取り図などへの署名を求める「名義借り」や、依頼を受けて署名する「名義貸し」だったが、同僚の名前を無断で書いたケースも一部で確認された。

警官同士は仲間のハズですが、同僚の名前を無断で書いてしまうような犯罪者が偉そうに取締りをしているんですね。明らかな虚偽公文書作成罪及び行使罪です。刑罰は1年以上10年以下の懲役というかなりの重罪です。

 一方、近年は否認事案が年間2500件を超え、処分された78人は県警の調べに「人員体制が限られ、ルール通りに見取り図の作成を頼める人がいなかった」などと釈明。県警は人員面の実情を踏まえ、マニュアルを見直す方針という。

要約します。「人手不足で頼みづらかったから刑法犯罪を犯してでも誤魔化すことにした」という事ですね。まるでブラック企業が労基法違反を平然とやっているのと同じような理由です。

客観性は担保されたのか?

で、兵庫県警は慌てて調べ直したようですが、

 2件で現場の計測ミスなどが見つかり、加点した違反点数を取り消したが、他は正しく実況見分しており、違反の認定に影響はなかったという。

65件中2件で計測ミスがあり、反則点数が取り消されたそうです。これって重要な事を示唆していませんか?

65件中2件ということは、約3%です。統計を取るには分母が少な過ぎますが、仮のこのくらいの割合で冤罪が作られているとすると、否認事件100件のうち3件くらいは冤罪ということになります。

そもそも、第三者の警官というのがお笑い草で、お仲間の警官が見分するのですからちっとも客観的ではないと思います。本気でやるなら利害関係のない第三者にやらせなければダメでしょう。それでもお仲間の警官が調べても3%もの冤罪が見つかったワケです。

これからは本人が作成してOK

で、兵庫県警が今後どうするかと言いますと、

名義借り2

兵庫県警、不正な「名義借り」が横行 70人を書類送検

兵庫県警は30日、交通違反の実況見分をしていない同僚に捜査報告書に署名させたとして、退職者2人を含む70人を虚偽有印公文書作成・同行使などの容疑で書類送検し、発表した。また、関与を認めた10人を含む現職78人を戒告や訓戒、注意処分とした。

監察官室によると、県警は内規で、ドライバーが違反内容を認めない場合、違反を取り締まった担当者以外の警察官が、報告書の現場見取り図の作成や写真撮影をするよう求めている。

70人の送検容疑は2009年8月~14年4月、取り締まった担当者が自ら実況見分して見取り図などを作成したのに、同僚が作成したと偽って65件分の報告書に署名させたというもの。うち1人は同僚の名前を報告書に無断記入したとして、有印公文書偽造・同行使容疑も加えた。

同僚を現場に呼ぶ手間を省くため、自ら作成し、同僚に署名だけを頼む「名義借り」が横行しており、確認された不正は、葺合署38件、東灘署5件、高速道路交通警察隊22件。うち2件は報告書の記載に誤りがあったとして、違反点数を抹消。残る63件は誤りがないとして点数抹消を見送った。

県警は、人員不足などの問題を抱える現場に負担をかける内規だったとして、取り締まり担当者も作成できるよう改める。河本博幸監察官室長は「多数の処分者を出す事案が発生し、誠に遺憾。業務改善と業務指導のさらなる徹底を図る」としている。

え?調べてみたら冤罪作成の証拠が見つかったのに、これからは取り締まった本人が単独で見分していいことにするようです。さすが警察の考える事は違いますね。悪い意味で。

否認事件は客観性を保つために第三者の警官が見分に立ち会う

→人手不足で頼みづらかったので虚偽公文書作成を日常的にしていた

→調べてみたら約3%の事件が冤罪だった

→現場の警官の負担を減らす為に本人だけで見分してもOKに内規を変える

→今後も起こるであろう冤罪に関しては無視

とまあ、こういう流れなワケです。

この事件で兵庫県警はもっと酷くなる

ただでさえ、異常な人間しか警察官にはなれないの兵庫県警なのです。第三者が立ち会ったところで、ほとんどの冤罪はもみ消されてきたのでしょう。

なのに、これからは第三者が立ち会わなくてもOKになるのですから、兵庫県警の警官が思い描くストーリー通りの見分調書と捜査報告書を作ればよく、これで現場は堂々と好き勝手な捜査報告書が書ける事になりますね。

送検された70人が懲戒免職になったという報道もありませんし、依願退職したという話も聞きません。10年以下の懲役になる重罪を犯した事が明らかなのに、です。彼らはおそらく不起訴になるでしょうし、戒告や訓告を受けたところでせいぜい「出世に影響」レベルの被害しかありません。だいたい、キャリア組は現場で交通違反の取締りなんか行いませんから、ノンキャリの「朝食時にいきなり大卒後輩の喉元をつかんで壁に押しつけたり、泥酔して部屋に入ってきて、いきなり平手打ちをするような高卒警官」が取締りをやっているワケです。

たかが内規ですから、こっそり変更も出来たハズですが、兵庫県警は今回の不祥事を奇貨として、もっと自由に冤罪が作れる体制を作ったことになりますね。

これがマスコミに報道管制をかけずに、あるいはむしろ積極的に報道させた理由ではないでしょうか?

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コメント

  1. とし より:

    本当に私の住んでる地域なのでびっくりしましたw
    こいつら自分の仕事が市民にどんな影響を与えているかとか、考えていないのですね。
    なんかもうこの地域では運転するのやめたほうがいいですね、運転するにしても最低二人は乗車していないといけないような気がしてきました。
    万が一、取り調べを受けるにしても、「兵庫県警 文書偽造」って検索させてから受けますw まあ、現場にいる奴はある意味被害者なのかもしれないです。

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